痛ましいほど楽園

言いたいことはありません

魚の骨が乾くにおい

ここ最近の私はどうにもダメだ。

何をしててもなんかダサい。

 

社交辞令は広義の嘘。

失礼な人には怒るべき。

つまらない飲み会は1時間で帰ったっていい。

 

わかっているけど、どうにもダメ。

 

「デートしよう」「今度はあれを観に行こう」「どこそこで飲もう」

社交辞令も真に受けて、律儀に待ってたり、ダイエットをしてみたり、服を考えたりする。

本当に私に会いに来てくれる人だけを大事にしたいし、それ以外には何にも期待したくないのに、社交辞令を真に受けている間はちょっと幸せなのもまた事実。

ダサい。

 

2ヶ月通ってる整骨院で、整体師が施術後に髪を撫でてくるようになった。

「綺麗な髪ですね、ずっとこうしてたくなっちゃいます……」などと言う。

私の中の強気なおばさんが出てきて

「ヤダ、キモ〜い!女をなめるんじゃないわよ!」

「ギリギリ文句を言われなさそうなラインを探ってるんでしょ!仕事を何だと思ってるのかしらね」

「ブリーチ3回した金髪頭が綺麗なわけないでしょ!見え透いたこと言ってんじゃないわよ!」

と暴れだしそうになる。

でも実際は、「やめてください」も言えずに、次回から別のところを探そうか、でもそれも面倒だなあ、と思うだけなのだ。

本当にダサい。

(ちなみにこのイマジナリーおばさんは、大掃除のときなどによく出てきて「捨てなさい!そんなダサい服、持ってるだけで女が下がる!」「この部屋見てるだけでダサくなってくるわ!」などと尻を叩いてくれる)

 

失礼な人に怒れないことは、私の中では本当にダサくて、ストレスの溜まることなのだ。

「こっちが大人になって流してあげよう」「可哀想な人だと思って……」みたいなスタンスもダサい。

バカを手のひらで転がしてる気になったって、実際はお互い下に見合ってるだけじゃん、と思う。

 

職場の会食なんかで、おじさんたちに

「ファーストキスはいつ?」とか聞かれたり、

「友達止まりの女って感じがするね!」とか

「お前、別に可愛くないからな」とか

「ああ、○○大なの。いい大学出た子は頭でっかちだから社会に出たら使えなくてうんぬん」とか言われたり、

そういうのに「キモーい!うるせえ〜!余計なお世話〜!」と言えなかったり、

そういうのが全部ストレスで、私の中の「ダサさポイント」が溜まっていく。

このままだと私はダサくなりすぎて死んじゃうんじゃないか。

 

私はわりと、よく笑い、よく食べ、よく飲む、あけすけなタイプだから、失礼な人になめられることも多いんだと思う。

こうして「失礼な人」とエンカウントする機会が重なれば、ダサさポイントがどこまでも溜まっていく。

なめられているダサさ、怒らないダサさ、ヘラヘラしているダサさ。

眠れない夜には、こうして積み重なったダサさがじわじわと私を殺す。

 

 

 

そういえば、地元のバーにはたまに「失礼じゃない」タイプのおじさんがいる。

その人が「つまらなかったらその場で立って、帰っちゃえばいいんだよ」って言ってたのを思い出す。

その人には、私と同じくらいの歳の娘さんがいるらしい。

それを聞いて想像したのは、「もし私がそのおじさんだったら、自分の娘には絶対そうしてほしいだろうな」ということ。

失礼なおじさんに失礼なことを言われたなら、空気なんて絶対に読むなよ。

ヘラヘラすんなよ。

お金置いて立ち上がってさっさと帰れ。

って、思うだろうなあ。

私には父親はいないから、よそのお父さんの気持ちを想像することしかできないけど。

 

つまらなかったら笑わないとか、失礼な人がいたら帰るとか、やっぱりどうにも難しいな。

 

今度からイマジナリーお父さんに

「そんな奴無視しろ!」

「門限がありますとか言って帰ってこい!」

「つまらない奴相手にヘラヘラするな!ダサくなるな!」

って背中を押してもらうのもいいかもしれない。

イマジナリーおばさんとイマジナリーおじさんを心の中に飼ってる危ない奴だと思われて、誰にもなめられなくなったらもっといいけど。