メモ「パロディ、二重の声」
東京ステーションギャラリーの「パロディ、二重の声」、良かったです。
二回行ったんだけれど、一回目と二回目でけっこう印象が変わる。
一回目はやっぱりパロディの面白さに目が行っちゃう。
どちらかというと、パロディが人の目をひくゆえんたる「デザイン」の部分。
元ネタがわかると気分がいいし、名作や偉人を凌辱するような悪趣味かつ不謹慎な態度が小気味よい。
もちろん、「面白いね」で終わらせない工夫もたくさんしてある。
「パロディ」という不思議な存在を解体しようとするアカデミックな言説があらゆるところに標示してある。
解説の充実具合もすごい。
ほぼすべての展示物についてたんじゃないかな?
とにかく、「面白いね〜いろいろあるんだね〜」で終わらせないようにはしてあるのだ。
それでもやっぱり、一回目は「面白いな〜」って気持ちが勝つんですよね。
だって本当に面白い。
やっぱり悪趣味なものへの興味って、隠せない。
「星の王子様」のパロディ本の「ポルの王子様」というエッセイ風ポルノとか。
ヒゲ面の男がグリコのパッケージ風のポーズをとって「ダリコ」なんてタイトルをつけている写真とか。
ほんとにくだらなくてしょうもないけど、みんな大好きでしょ、こんなの。私は大好きだよ。って感じの。
二回目には、初見のインパクトはないんだけれど、そのぶんちゃんとパロディの「アート」の部分に着目できる。
パロディは「元ネタがわかると気分がいい」という、優越感と内輪性によって成り立っているんだね、とか。
ていねいに模倣されているほど、わたしたちは血眼になって元ネタとの差異を探したくなるよね、とか。
芸術の唯一性信奉へのシニカルなまなざし、そしてそれをまなざす鑑賞者の優越感に訴えかける二重の視線がパロディの独自性かもね、とか。
とにかく印象深い企画でした。
誰かと行ってヘラヘラ笑うのも、一人で行って静かに見つめるのもアリでしょう。
たとえば、私の母は美術にはまったく興味がない人なのだけれど、そういう人だからこそ連れて行きたかったなと思う。
今日で終わりなのがとても残念。